~穿つ~ シリーズ

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元々生まれも育ちも良いシルフィは、小さいころから英才教育を受け、常に人々のトップへと君臨し続けた。 小さい頃にはもう既にほとんどの軍略や戦略をマスターし、子供同士でする指揮官を用いた鬼ごっこのような遊びでは負けたことなどただの一度もなかった。 そして帝国に軍師として入る。 当時一将軍にすぎなかったナルタに仕え、ナルタをあらゆる奇策を用いて、瞬く間に王へと押し上げた。 人類史上ありえないほどの活躍と功績だった。 次期王は、本来王の選定した後継者からなるものだが、一将軍から王へとなるのは異例中の異例である。 当然、臣下や国から反発があったが、シルフィはそれらすらも言葉巧みに捻じ臥せた。 仕え忠義を尽くす主君のために己の才を存分に振るう。 強いて言うなら、己の才を振るえるのであれば、主君は誰でもいいのだ。 そうした経過でシルフィは今、帝国のナルタ王に仕えている。 シルフィ「…………これは……」 見開かれる両目。 いつも通りの散歩道にはない、大きく開けた空間がある。 そこにはあってはいけないモノがあった。 樹海を抜け、散歩がてらに処方箋に使う薬草を探していただけなのに、目の前にソレは現れた。 ───クリスタル。 二メートルはある障壁の造形物。 その面の一枚一枚は燦然と輝き、こんな森の開けた場所に静かに浮いている。 このありえない状況すらも、その輝きの前には霞み、あたかもそこに在るのが正しいと。 美しいと思ってしまう。 だが重要なのはクリスタルではない。 その中にある”モノ”だった。 ……人がいる。 きらきらと煌くクリスタルの中には一人の女性が閉じ込められていた。 気高く極めて純白であるドレスに身を包み、肩まである淡い銀色がかった金髪。 この世のものとは思えないほどの美貌と魅力。 荘厳にして華麗。 その容姿はまさに、”女神”と呼ぶに相応しかった。
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