-序-

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 私は、ママが16歳の時に産まれたのです。でも、一緒には暮らしていません。と、いうよりも何処に居るのかすら知らないのです。自分の母親なのですが。  今日は私の11歳の誕生日。お母さん達が、私の学校帰りを待ってくれています。 (家へ帰ったら、きっと楽しいパーティーが待っている)  楽しみで仕方無くて、不謹慎ながら授業中はそわそわしっ放しでした。  育ての親は、ママの母親、いわゆるお祖母ちゃんとママのお姉ちゃん、いわゆる伯母さんの二人。お祖父ちゃんは私が2歳の時に他界してしまって、記憶は朧気で申し訳無く思いますが、泣く度に優しく頭を撫でてくれた事は感覚で覚えています。そんなかんじの3人家族で10年間を過ごしてきました。  お祖母ちゃんは私にママの事を良く話してくれます。気立ても容姿も近所の子に比べたら別格だった、と。しかも勉強もできて試験では常にトップを争っていた程の頭の良い子だった、と褒めている程の素晴らしい方だったのでしょう。。大抵、伯母さんも頷きながら聞いています。 「でもね、違ったの。高校に入って、まさかあんな事をしでかすなんて…」  この話になると表情に陰りをおこすのです。「まだリナは子供だから良く分からないだろうけど、入学して間も無くして妊娠してね…」  ため息を漏らしながら、私の頬に手をあてます。"妊娠"という意味は解ります。だって保健体育の授業で習いましたから。そして女の人が"妊娠"したら"出産"することも。 「産まれてきたのが、リナだったから良かったわ」 「どうして?」  毎度ながら、きょとんとしてしまいます。 「素直で良い子だからよ」  優しく微笑んで、そして私を抱きしめます。お祖母ちゃんの温もりが伝わってきます。私も、ぎゅっとお祖母ちゃんに抱きつきます。お祖母ちゃんには辛い過去でも、こうしてくれる事は私にとって、とても安らげる時間です。愛情を感じる時間なのです。
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