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お帰りの会を終わらすチャイムが鳴りました。いつも一緒に帰る友達にバイバイを言って、昇降口へ急いで向かいました。
お祖母ちゃんに買って貰ったお気に入りのリボンの付いた可愛いピンク色の靴を下駄箱から丁寧に下ろし、上履きを其処へ戻します。靴を履いて校門へ向かって走り出すと一人の女の人が見えました。何故か少し違和感を覚えましたが、知り合いでも見覚えも無い人なので、そのまま横を走り過ぎました。ふんわりと良い薫りがする其の女の人は、ランドセルを背負って走り去る私に声をかけてきたのです。
「もしかして、リナ?」
突然、名前を呼ばれビクリと肩に力が入りました。
「やだ、すごいソックリじゃん」
高いヒールをコツコツと音を鳴らしながら、私の胸元に付けてある名札をつまみました。馴れ馴れしい言動に嫌悪感を抱き、
「放して下さい」
きつい口調で、名札をつまむ其の手を払い退けました。
「ふーん。それが母さんの躾ってわけ?」
(え?この人、今、「母さんのしつけ」って言った?)
ぱっと顔を上げると、お化粧は濃かったけれど、お祖母ちゃんから見せてもらったアルバムの中に居た"ママ"の顔に似ていました。私は驚きと不安で、ろ足で距離をとり、くるりと向きを変えると必死に走り出しました。
「ちょっ……待ちなさいよッ、リナ?!」
あの女の人の声が遠くで聞こえましたが、私は振り返らずに、一心不乱で家まで走り続けました。呼吸が苦しいと感じる程、息を切らして勢い良く玄関に駆け込むと、その侭へたりと座り込んでしまいました。
その何事かとお祖母ちゃんが部屋から出てきてくれました。
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