二章 出会いは突然に、再開は偶然に

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 その日、村で少し調べてみると、セレの行き先は案外簡単に突き止めることができた。  乗り合い馬車の運転手に聞くと、確かにそのような少女が乗車したことを覚えていたのだ。  あの年頃の、明らかに熱病に冒された少女が馬車に乗ろうとするのは珍しかったのだろう。休養を勧めたのだが、がんとして聞かなかったらしい。  彼女の行き先はシフト商会――彼女の実家に当たる商会だ。  追いかけたいという思いもあった。  だが、追いかけたところで彼女は喜ぶどころか、むしろ失望するだろう。  ロウウィンは運転手に金を渡し、シフト商会に居ると思われる彼女宛てに手紙と、一つのペンダントを届けてもらうことにした。  もう、十六年も前のことだ。
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