二章 出会いは突然に、再開は偶然に

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   ◆ ◆ ◆  彼女がずっと寝ていた部屋で、彼女の寝ていたベッドに横になりながら、騎士は焦点の合わない目で天井を見つめる。  一体何が有ったのだろう?  一体何が悪かったのだろう?  いや、何が悪かったのかなんて決まっている。  自分が逃げていたからだ。  逃げているとわかっていながら――何万もの人の人生を抱えるべき立場でありながら、たった一人の女性にかまけて、他の全ての責任に背を向けていた。  騎士はふとベッド脇の机を見た。  そこには封を切った封筒が置いてある。その中身は何度も読み返した。  あの日、彼女が居なくなった時、この部屋に戻ってくると、それはすぐに目についた。  明らかにそうとわかる置手紙。  熱病に侵されてほとんど動けないはずの少女が残した決別の証。
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