二章 出会いは突然に、再開は偶然に

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 彼女はどんなつもりでこれを書いたのだろう?  いや、それはわかっている。彼女は堕落した騎士を正視できなくなったのだ。  その原因が自分にあるとわかっていたから。  だから、病気を押して自分の前から立ち去った。  こうなるともう騎士に残された道は少ない。  こうやって、彼女との思い出に浸り、永遠に自分の殻に閉じ籠るか、彼女のことを諦めて騎士としての誇りを果たすか。  そして、彼女が何を期待しているのかは嫌でもわかってしまう。  そう、自分は騎士なのだ。  たとえ一時堕落したとはいえ、彼の体には騎士の血が流れている。  それに、愛した女性の期待するような立派な存在になりたいというプライドも。
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