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「……ふぁ~…ぁ」
水色のカーテンから漏れる朝の光で、目が覚めた。
春休み中は母さんの鉄拳で起こされ、遅めの朝飯、所謂ブランチを取る。
そんな学生特有の自堕落な生活を送っていた俺だった。
さっき見た夢のせいだろうか、いつにも無く良い目覚めだ。
「紅葉(もみじ)……か」
自然と頬が緩む。
俺……久我山架(くがやまかける)にとって、鴨頭草紅葉(つきくさもみじ)は、5才から三年前の小学六年になるまでずっと一緒。
親友……だった。
だが、紅葉は中学生になると同時に、アメリカへ引っ越してしまった。
当時は、紅葉と離れる事が悲しくて、泣き喚いていたっけな。
だけど、元々俺と紅葉は住む世界が違うんだ。
鴨頭草家は古くから続く由緒ある家系であり、近年は日本でも有数の財閥として、その名前を轟かせている。
最近まで知らなかったけど。
中学三年の日本史の授業で、鴨頭草一族が出た時は驚いたもんだ。
そんなこんなで過ごした中学時代は、友達も出来て、大切な思い出だ。
でも……何かが足りない、そう感じてもいた。
そして今日は……高校の入学式だ。
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