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黄金色の草原で
時刻はすでに10時を回っていた。
「生きているのが不思議なくらいです。…今夜が峠でしょう。」
医者はそれだけ言うと、病室を出て行った。
消灯時間はとっくに過ぎており、病室はただ医療器具が機械音の鳴らす音が単純にこだましていた。
「結城…。なんで交通事故なんかに…。こんな目に遭わなければ、明日から高校生だったのに…。」
結城の母は、ただハンカチで、止まらぬ涙を拭くだけだった。そんな母を見かねた父は、後ろから優しく抱きしめる。
「お願い結城…。戻ってきて…。」
そんな母の願いも、ただ空しく室内に響くだけだった。
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