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深夜の住宅街に警報器がなる。遮断機のバーがゆっくりと降りて踏切を分断する。赤い警告灯が規則正しく交互に明滅する。 カンカンカンカン---- 踏切には誰もおらず、警報器の音が深夜の住宅街に空しくこだまする。 カンカンカンカン---- 一体どれ程の時間が経過したのだろう。彼方から電車がやって来た。 カンカンカンカン---- 眩いライトが近付いてくる。 カンカンカンカン---- 電車が踏切に侵入する。 カンカンカンカン---- 電車が通過したことにより、辺りに風が起こる。 カンカンカンカン---- 遮断機の下のひっそりと添えられた百合の花束がその風でそよそよと揺れていた。
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