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二人の兵士は絶望した。
ここは、あたり一面無限に続くかのような草原、しかしそれは数時間前までの話だ。今は曇天の空の下、無数の魔族に踏み荒らされ、さらに数十人の人、獣人、エルフの骸と数体の魔族の骸、彼らの鮮血で汚れている。
数時間まで雑談を交わしていた戦友は死に絶え、目前にはただの兵士である彼らには適うはずもない強大な敵、いつかはこうなると覚悟はしていたはずなのに、彼らの手は震えていた。
そんな絶望の中、突然の声が聞こえた。
「すまない、もっと速くこれなくて」
彼らはギルド本部からの援軍を期待して振り返る。
しかし、その声のするところには一人の少年がローブを羽織って立っていた。
ローブに隠れて顔はよく見えなかったが体格的に少年で間違い無いようだ。
彼らの望んだ援軍とは程遠い援軍……かに思われた。しかしそんな失望を覆す、彼らの想像を超える事が起こった。
「光の初級『聖』、闇の初級『暗黒』、混合魔法『混沌』」
少年が呟くと両手から魔法陣が展開し、右手の魔法陣から光輝く球が、左手の魔法陣から漆黒の球が、彼が二つの球を混じり合わせた瞬間、球は収縮し灰色の光を放つ、そして、灰色の光は兵士を避け、魔族を飲み込んでいった。
灰色の光がより一層輝いた次の瞬間。
魔物の大軍は僅かに削られた地面と共に消滅していた。
残されたのはむき出しの地表と二人の兵士、そして兵士達の亡骸だけだった。
そして少年は、兵士達に謝罪の言葉を継げ、『転移』と唱えその場から姿を消した。
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