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「このあたりが楽譜のコーナーです。私は右端から探しますから逆をお願いします。真ん中にたどり着いたときに二人の手が触れ合ってどぎまぎしちゃう展開を希望したいです」
「咲夜さんってそういうの好きですよね」
「大好物です」
満面の笑みを浮かべてから咲夜は楽譜探しに取りかかった。 改めてみると結構な量だ。零也も急いで取りかかる。本を開いて二重奏の曲を見つけるのだけど、簡単な曲ばかりでなんだかつまらない。
「…あれ?これって…」
零也が抜き出したのは一冊のノート。名前の部分が削り取られている。年季が入っていそうなそのノートをぱらりとめくってみる。中に書かれていたのは零也にとってはだいぶ魅力的な文だった。
「人間でもできる法術集…!」
散葉が力を失っている今、神降ろしには頼れない。ちょうど何か戦うための術を探していたのだ。どんな術があるかは別として今は楽譜を探さなくては。
「零也さん、ありましたか?」
「あ、や、まだです」
「……?なにか変なものでもありましたか?」
「なんでもないです!それより咲夜さんはありましたか?」
「いえ…というか、ここ全然バイオリンないです」
それは零也も感じていた。ピアノはやたらあるのにバイオリンはほとんどないのだ。
「私が今度探しておきます。別のことをしましょう」
「別のこと?」
「はい!別のことです」
言って、咲夜は笑った。
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