1.少年の独奏~ソロ~

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 まぁ、頑張れとは言ってもあと二、三歩だ。咲夜は昔からトラウマがあるらしく広葉樹林が苦手だとか。だからこうやって励まさなきゃいけない。 「ほら、着きましたよ」 「ここが…」  公園に第一歩を踏み入れた瞬間、咲夜は動きを止めた。この前起こった変化はそのままで、季節を問わず花が咲き乱れている。 「不思議な場所ですね。今まで調査できなかったので危険なのかと思っていたのですが…勘違いだったようです」 「少なくとも危なくはないと思います。でも…僕以外が入れないのはなんででしょうかね」 「まだわかりかねますね。そもそも私が破れないとなると誰が作ったんでしょうか。だいぶ昔からあるようですが…」  咲夜も知らなかったらしい。調査ができなかったから当たり前と言えばそこまでなのだけど。 「先代の校長に聞いてみるとか…」 「…はい?先代もなにも私が初代ですよ?」  何を当たり前のことを聞くんですか?と言わんばかりの勢いで咲夜は首を傾げた。しかし全然当たり前じゃない。零也が知る限りでもこの学園には三十年前に絶版になっている本を置いているので、少なくとも三十年前にはあったことになる。でもどこからどう見ても咲夜は三十過ぎには見えない。よくて二十代前半だ。十代でも通るくらいだ。  零也が固まっている理由がわかったのか咲夜は両手を振る。 「ま、間違えました!私はえっと…えーっと…千八十代目校長です!」 「…それだと一年に一度校長が変わっててもこの学園、築千年以上ですよね」
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