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「怖いの?」
「うんー…。あんなの初めてー…。ざわざわして、とげとげしてて……もふもふだったのー…」
もふもふって怖さを表す言葉ではなかったような。
けれど七海が嘘を言ってるとも思えない。実際に七海が震えているからだ。
「なにかしらね? 七海は私たちの中で一番そういうのを感じやすいから気付いたんでしょうね」
「あとで長老さんに聞いてみるよ。大丈夫。ここにはみんないるから」
「うんー…。パパ、七海ね…パパに会いたくて頑張ったのー…。だからご褒美に…撫で撫でしてー…?」
相当怖かったらしく、背中に回った七海の手はいつもより強く服を掴んでいた。上目づかいに懇願してくる娘が可愛くて、零也はすぐに頭を撫でる。咲夜とは違う、散葉似のサラサラで少しふわふわした髪だ。
七色の髪はいじめられるのではないかと心配していたのだけどそんなことはなかった。
近くで見ると右側が赤っぽい暖色系で後ろが緑気味、左側が青になるのだけど、不思議なことに外で太陽の光を浴びているときは何故か角度によって違う色にも見えたりする。
便利なことに、散葉の力を継いでいるようで本人がその気になれば好きに色を変えられたりもする。時々、緋色一色にして散葉とお揃いと喜んでいたりする。
「えへへー…」
「いいなぁ、七海。零也くんがお父さんだったら私間違いなくメロメロだよ」
「うん…七海、パパにメロメロー…」
すりすりと頬を押し付けながら幸せそうに声を漏らす。
いつか「パパきもい」とかいわれる日が来たら、なんだか首を吊れそうだ。そんなことを考えていると、零也の肩がつつかれた。
「あ、あの…着れました」
「本当ですか咲夜さ──」
言いかけて零也は動きを停止した。
普段はスーツだからこそのギャップ。いつもと違って左側で結ってある髪。そして恥じらいながらも零也の言葉を期待している表情。ぶっちゃけ、すごく可愛かった。
「わー…! 咲夜ママ綺麗ー…!」
「うふふ、ありがとうございます七海ちゃん」
嬉しそうに笑って、咲夜は零也に目を向けた。
「あ、あの…どうでしょうか…」
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