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くらっと目眩が零也を襲う。
「き、綺麗です…すごく」
「ありがとう…ございます」
なんだか気恥ずかしくて目が合わせられないでちらちら相手の方を伺っていると、なにやら気にくわなかったらしく散葉がすぐさま間に割って入ってきた。
「咲夜? 次は私が着るから脱ぎなさい?」
「はい? …ってちょっと散葉さんやだっはぎ取らないでください!」
「散葉さんストップストップ!」
零也の願いも虚しく、散葉はなんの加減もなく咲夜から服を剥ぎ取る。自動的に咲夜はショーツ一枚の姿になるわけで。
「見ててね零也くん! いまから着替えるから!」
「み、見ませんよ!」
「あ…でしたら私、このままでいますから鑑賞なされても…」
「しませんから! っていうか二人とも恥じらいをもってください! 七海が真似したらどうするんですか!」
「パパー…? 七海も脱ぐー…?」
「脱がないでいいから! あーもうっ! 二人とも落ち着きなさいっ!」
Ⅳ
第二回、鬼の里宴会は開催されていた。今回は散葉さんが飽きたので玉座には座っていない。いろんな人のところを回り終え、今は鬼太郎先輩と悟先輩と長老さんの下に来ている。
「怖いのがいた?」
「はい。うちの子が見たそうなんです」
「ふむ…」
少し考え込んで、長老さんは質問に答えた。
「神の娘が間違えるとは思いにくい…ならば事実なのじゃろう。紫髪の鬼神…存在したのか…」
「紫髪の鬼神…?」
「そうじゃ。この広場に落ちてきた伝説の張本人のことをそう呼んでいる。紫色の髪をしているそうじゃ。その時代の鬼はその者に立ち向かったが、鬼神のごとき強さの前に手も足も出なかったと聞き及んでいる。落下したときの傷を癒すために森の中の神殿に籠もっているらしいが、罠が多くてだれも近寄れんのじゃ」
なるほど。伝承がうまく伝わっていないのは確かめようがないのと、事実そのものをもみ消すためなんだ。知ってしまえば恐ろしくなる。恐ろしくなれば立ち向かう。立ち向かえば待っているのは───死。
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