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さらさら感を極めた咲夜の髪に指を通しながら、今度は優しく言葉をかける。さっきは強く言い過ぎた。
「僕がはっきりしないから不安になっちゃうんだと思います。でも…それは咲夜さんが悪いことなんて一つもないんですよ?」
「…………」
「……咲夜さん?」
なんの反応もない咲夜に再度声をかけた瞬間。
「ふえっ…」
「えっ!?」
「ふぇぇえん!」
泣いちゃった。
初めてに近い咲夜の涙。零也は一瞬呆然としてしまった。
「ど、どうしたんですか!?ほーら、いい子だから泣き止んでください…」
「ふぇぇえん!零也さんの…バカァ…!」
「えぇっ!?さ、咲夜さん?えっと…ごめんなさい…?」
「咲夜ちゃんて呼んでくれなきゃ…嫌です…!」
咲夜ちゃんは零也が小さい頃に使っていた名称だ。中学校からは咲夜さんと呼んでいる。
「咲夜…ちゃん?」
「うぅぅ…!そうやって零也さんが優しいから…優しくされちゃうから…諦められないんですよぅ…!」
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