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☆
「………?」
変だ。
目の前が真っ暗。というか、塞がれている。お決まりの散葉枕の感触だ。背中には暖かいものが抱きついている。多分七海だろう。
「…おかしいな。確か宴の最中だったんじゃあ…」
「う…ん? 零也くん起きたの…?」
「あ、起こしちゃいましたか。ごめんなさい。まだ寝てても…」
「ううん、起きるよ。のど乾いてるでしょ?七海だけ寝かせておけるかな?」
「はい」
起こさないように七海の手をどけて、やかんに入ったお茶をコップに入れてくれている散葉さんのとなりへ向かう。
太陽光が窓から差込み始めているところをみるともう明け方らしい。
「はい、零也くん。そんなに冷たくないけど我慢してね」
「ありがとうございます」
わざわざ起きて入れてくれたお茶に文句をつけるはずもなく、一口だけ口にして息をついた。
「さて、散葉さん?」
「なにかな零也くん」
本当になにもなければ見とれるほどの笑顔。けれど今の僕には通じない。
「僕にお酒飲ませましたよね?」
「え…? 記憶にないんだけどなぁ…」
なにをぬけぬけと。
「それは変ですねぇ? 僕、散葉さんから受け取ったものしか飲んでないのにお酒の匂いが口からします」
「…それより零也くん。昨日、酔った勢いで結構大量に力を使ったんだよ? 疲れてない?」
「へ? 僕が?」
「うん、零也くんが。誰も怪我はしてないんだけどね。私が長老にセクハラされてるのを見て怒ったみたいで」
「そう…なんですか」
全く記憶にない。相当酔ってたみたいだ。まぁ怪我がないならよかった。
「あ、そうだ。今日はやっぱり遺跡に行くことにしたからね?」
「……まぁうすうす予想はしてましたが……」
「お昼過ぎからだって。もう一眠りする?」
「いえ。だいぶ寝ましたから。散葉さんこそ寝てていいですよ? 僕散歩してきますから」
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