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「ええ。鬼の首領と呼ばれる彼の大妖なら話に筋が…」
「通らないわよ日本人形」
「だれがおかっぱの昔ながらのホラーですか! だってそんなに強くて時空間の壁を超える大妖怪はあんまりいないじゃないですか」
「そもそも大前提に性別は女でしょうが」
「………あ」
咲夜さんの勢いがぱったり止まった。
「命までおんなじミスしてたわけ? 二人そろって何やってんのよ」
「む…」
どうやら酒呑童子は男性らしい。少し妖怪についても勉強したほうがいいかもしれない。
「こんなの考えるだけ無駄よ。実際のことはわかんないんだから。私が力を使えれば遠見の術で見れたんだけど…」
「しょうがないですよ。散葉さんが悪いわけじゃないです」
ポンポンと散葉さんの頭を撫でて、集まったみんなを見つめる。もうただの楽しい観光じゃない。危険が伴う調査だ。
「さて、一緒に行ってくれる人は申し出てください」
「んじゃあまぁ、一応ここで育ったわけだし、零也を一人にもできねぇからな。俺が行く」
「あら政基さん? 俺『が』とは聞き捨てなりませんね。俺『も』でしょう? 私が行かないはずはありませんよ」
「当然、私も行かせてもらおう」
三人が手を挙げてから咲夜さんは煉くん達に目を向けた。
「あなたたちは万が一のために里に残りなさい。鬼太郎さんと悟さんの補助です。いいですね?」
「任せてください」
やはりこういうところはしっかりしている。僕はそこまで考えが回らなかった。
そうだ。最悪を忘れてはいけない。僕らが全滅して里に被害が及ぶ可能性もあるんだ。
「さて、ではみなさん。準備が出来次第ここに集合です。遺書はいりませんよ。あなた達は私の生徒です。死なせはしません」
「たまには先生らしいこと言うじゃないっすか」
「誰ですあなたは。記憶から消えてます。自分の身は自分で守りなさい縁藤政基さん」
「バリバリ名前呼んでるじゃないっすか!」
…大丈夫かなぁ。
たっぷりの不安とちょっぴりの安心を抱えながら僕は優しく散葉さんの手を握った。
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