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そもそも七海は手間のかかる赤ちゃんの時期がなかったし。
お手伝いもちゃんとやるし文句も基本的には言わないいい子だ(親ばか)。
「そっかぁ。七海ちゃんもう生後2ヶ月か」
「そうー…。七海、六分の一才ー…」
短いんだか長いんだか。
考えてみればまだ2ヶ月しか経ってないんだ。いろいろあったからなんだかもっと経っている気がする。
「零也くんそろそろ行こう?」
「あ、はい。じゃあ七海をお願いします」
「任せて。気をつけなさいね」
言って、山声さんはそっぽ向く。ついつい顔が緩む。長いつきあいだから次の言葉が手に取るようにわかる。
「えっと…気が向いたら政基にも頑張りなさいって言っておいてくれるかしら」
「ふふふっ。最優先で伝えておくね」
「ちょっ…零也!」
最後まで聞かず、僕は散葉さんが待つドアに走る。
「七海! 行ってくるね!」
「うんー…! 行ってらっしゃいー…!」
可愛い娘に見送られながら僕は散葉さんの手を取って部屋を出た。
「あの子も素直じゃないよね。ツンデレってああいうのを言うのかな?」
「多分…。よくはわからないですが」
最近、散葉さんはよくわからない言葉を使うのだけどどこで学んでくるんだろう。間違った方向で現代文化を学んでそうでちょっと怖い。
「しっかりやらなきゃね。七海と膝枕の約束したんでしょ?」
「ええ。無事に帰らないと怒られちゃいます」
「うふふ…頑張ろうね!」
「はい!」
☆
「あぁ…なるほど? 確かに邪気はつよいな」
「違うわよ。零也くん? 本当はすっごくいやなんだけど指輪を貸してあげてくれるかな」
「はい? わかりました」
多分、命先輩の能力を上げるためだろう。本当に嫌そうな顔の散葉さんを見ながら僕は指輪を手渡した。
「…いつも零也が付けている指輪…。入浴中は外すのか?」
「え、いえ。緋緋色金は錆びないんで付けたままですよ?」
「つまり、この指輪は君の素肌のいろんなところに触れて──」
「変な妄想してないで早く探ってみてくださいっ!」
命先輩、こんな人じゃなかったのに。完全に散葉さんの影響だ。
「とは言っても…この程度の邪気には慣れているんだがな」
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