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あまりにも嬉しそうに笑うからつい一瞬見とれてしまった。
いや、もしかしたらもっと長く見ていたかもしれない。
仮に散葉さんが咲夜さんを僕の視界の外から掴み出したりしなければ。
「ちょっと散葉さんストップストップ無言でアイアンクローかけないでくださあぁぁぁあ!」
「黙れ、殺すわよ」
ぞっとするような声色なのに何故か笑顔で、散葉さんは咲夜さんの頭に更なる圧力をかけた。
「────────!」
「散葉さんその辺で…」
「……わかった。じゃあ次は零也くんね?」
「……………は?」
「いや、だって汚されたら消毒しないといけないでしょ?」
なにを当たり前のことを、とでも言いたげな風に散葉さんは近づいてくる。
────やばい。
怒りで我を忘れている。
例えるなら風の谷へ侵攻している大量の巨大虫を眺める気分。だめだ、蹂躙される。吸い尽くされて流し込まれる。
「どうしたのかなぁ? 彼女をまるで恐ろしい物を見るような目で見ちゃって」
「そ、そ、そそっそんなことはないですよ? 散葉さんはいつもと同じく美しくて可愛くて────」
「じゃあいいよね」
「ふむっ…! ん、んぅ! ちゅる…えるっ…ちょっと散葉…えぅっ」
と、僕が犯されている隣ではなにが行われているかと言うと。
「さて、随分な愚行をおかしたな咲夜」
「こ、校長命令ですっ! その見るからに痺れそうな右手を引っ込めて私から離れなさい!」
「できない相談だ」
「きゃあぁあぁあぁ!」
むこうはもっと酷かった。
「えっと…そろそろ行きませんか? 早く帰った方が七海ちゃんも喜びますし」
ぴくっと散葉さんの舌の動きが止まった。ゆっくりと僕から顔を離し、散葉さんは今来た道を振り返った。
「それもそうね。私もそれなりに堪能したし」
「…ところで散葉さん…。消毒なら別に舌を入れる必要はなかったんじゃ…」
「さぁ零也くん気合い入れてね!」
はぐらかされた。まぁ別に嫌だったわけじゃないのだけれど。
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