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校長室の窓は開け放たれていた。風に黒髪をなびかせていた咲夜は赤いペンを置いた。
目の前にあるノートのページは死霊事件を開いていて、左上に『済』と赤字で書かれている。
「ふう、もう4月…事後処理に2ヶ月近くかかりましたか」
窓の外に視線を移して小さく呟く。
「彩葉さん。任務を受けるって言ったときの零也さん、あなたにそっくりでした。──ちゃんの分まで元気に生きてますよ」
トントン、とノックの音がして、聞き覚えのある声が部屋に響いた。
「あの、咲夜さん?入ってもいいですか」
「零也さん!?どうぞ!」
「失礼します」
礼儀正しくお辞儀をして歩いてくるのは少し幼い少年。不思議ずくめの学園で数少ない普通の男の子、日溜零也だ。
すぐに立ち上がってポットから紅茶を注ぎながら咲夜は問いかける。
「今日はどういった要件で?デートなら24時間受付中で──」
「あの、今日は暇ですか?」
「………え?本気ですか?」
冗談のつもりだったのに。確かによく考えてみればいつもは憎たらしいくらいに零也にくっついている恋敵の姿が見えない。
「…散葉さんと七海、街に買い物に行っちゃって僕一人なんです…」
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