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Ⅰ
零也は珍しく洗い物をしていた。いつもは零也がやろうとすると世話焼きな恋人がスポンジを取り上げてしまうから今日はちょっとだけ特別だ。
「行ってくるね、ダーリン」
「はい。…ん…」
いつもとは違う呼び名で呼ばれて振り返ると口を唇で塞がれた。三秒過ぎてから散葉は口を離した。
「気をつけてくださいね?力は使えないままなんですから」
「でもまぁ筋力とかは戻ったし平気だよ。七海もいるし」
「そうでしょうけど一応です。なにかあったら電話してくださいね」
「うん、えへへ。心配してくれてありがと!」
前触れもなく抱きついて、零也の頭を撫でた。身長は相変わらず伸びてないからやはり散葉の胸に顔を埋める形になってしまう。
「いえいえ。玄関まで見送ります。七海も待ってるでしょうし」
「ありがとっ!洗い物はその辺でいいよ?帰ったら私がやるから」
「たまには休んでください」
そんな会話をしながら歩いてくと、玄関で可愛い娘が笑顔で出迎えてくれた。
「パパー…行ってくるねー…?」
「うん、可愛い服を選んで僕に見せてね」
「うんー…!」
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