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「やぁ…ま、政基…ベッドまで…ぁん!」
「待てねぇ」
「ひぁぁ!」
脱兎の勢いよろしく、零也は二人の部屋を後にした。
うん、なんかもう、耐えられなかった。
☆
「なるほど。お洋服を買いにいったんですか。確かに散葉さんは作れませんしね」
説明を終えて零也は咲夜が淹れた紅茶を啜っていた。
「はい。だから咲夜さんがいてくれてよかったです」
「っていうか、いつもそんなに忙しくないですけどね。全部部屋で出来ちゃいますし」
「いや、でも調査とか…」
「インターネットがあります。それでダメならメール一つで隊員が動きますし」
うふふっと咲夜は笑うが、零也は知っている。咲夜はいつも零也にかまってるとき以外は忙しく働いていることを。たまに自分の意志で会いに来ると机で寝てたりしているし。
「でも私の部屋に零也さんが楽しめそうなものはないですね…」
「咲夜さんはいつも何をして暇つぶしするんです?」
「いやですねぇ、決まってるじゃないですか。盗聴記録やら盗撮記録やらを眺めて───」
「聞いた僕がバカでした。…あ、じゃあ久しぶりにバイオリン貸してください」
部屋には何もなくても咲夜は実は多趣味で、バイオリンから園芸、小物づくりとなんでもやる。バイオリンは昔、咲夜に習っていたことがあるのだ。
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