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「……なんで」
私は自分の考えを否定されたようで少しイラつきながら聞き返す。
「翼があったらお前、どっかに飛んで行っちまうだろ」
私は空を見上げたまま、目を閉じる。
「当たり前。この窮屈な社会から飛び出したいもん」
「だからいらねぇんだよ」
アイツの声に、煙草のにおい。
「お前が俺の前から消えられたら困る」
ゆっくりと目を開ける。
そのまま、アイツの方へ視線を向けて黙る。
「だから、飛ぶな」
アイツは私を一瞥し、空を見る。
「お前は、俺の前から消えるな」
……窮屈な社会だけど。
なんの喜びも、幸せも、そして不幸さえも小さな欠片に変わる世界だけど。 「アンタがいるなら」
ここに居てもいいように思える。
END
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