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「あははは。もちろん嘘でさ。――死体役は光男本人がやって、密室の仕掛けをメンバーの誰かにやらせるんだ。その仕掛けを任された誰かを他のメンバーで当てるっていう――つまり探偵ごっこだよ」
それもそうか――毎度トリック使って殺人を犯すような危ない人間を入れるはずがない。
「見事解いた人には一万円分の図書券が貰えるのよ。――ねぇねぇ、探偵くんも参加してよ」
「それはええねぇ。ほんまもんの探偵がする推理、おばちゃん生で見てみたいわ」
「え? ぼ、僕ですか?」
高校生探偵といえど、解いたのは一回だけだ。
しかし、僕が断る間もなく参加が決定された。
「ほな、ちょっと行って来るわ」
「どこへ?」
坂本さんが目をギラリとさせて言った。
もしかしてトリックを仕掛けに? などと思ったのだろう。
「二階の二人にお寿司渡しに行くんよ。まだ始まってないみたいやしね」
そう言って青木さんはザッと立ち上がり、鯖寿司が入ったタッパーを持って二階へ上がっていった。
「九時か……」
田嶋さんが談話室の古時計を見て言った。
針は九時ちょうどを指している。
「九時ちょうどっていうのは気になりますね」
言ったのは以外にも本条さんだった。
「お。探偵婦人もなかなかやるねぇ」
探偵婦人――夫は僕だろうか?
「確かに決められた時間って気もするわね。――じゃあ青木さんが犯人?」
推理サークルとか言うから、どんなトリックを仕掛けてくるのか期待していたけど、案外呆気なかった。
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