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「あの……横川くん?」
「へ?」
「どうしたの? 暗い顔して」
顔を覗き込む彼女。
僕はドギマギしながら「大丈夫」と言った。
彼女の名前は本条真奈美(ホンジョウ マナミ)。僕と同級生だ。
黒の清楚なロングヘアーに、すべすべの美白肌。モデルだと言われればみんな頷いてしまう――そんな絵に描いたような美人が僕の目の前にいる。
「……本当によかったのかな? 文化祭まで時間が無いから、前のままでいくってことになったけど、実際……」
実際ここで人が殺されたんだから――と本条さんは言いたかったんだろう。
そう……ここは山奥のペンション。
三人もの犠牲者を出した殺人現場だ。
僕は彼女を元気付ける為に明るく言った。
「多数決で決まったんだから、しょうがないよ」
「……うん」
本条さんが僕を心配してくれている――なんだか少し嬉しかった。
談話室には僕と本条さんの二人きり。時々話に間が空いて、古時計の秒針が僕を急かす。
「なんか――変な感じだね」
本条さんは少し微笑みながら言った。
「どうして?」
「だって――前まで普通に接してた人が、世間から高校生探偵って呼ばれるようになって、なんだか――横川くんがどこか遠い存在になっちゃったから……」
僕はいつだって君の側にいるさ――などと言えれば、僕もモテてたはずだ。
「本条さんは、ここへ来るの嫌じゃなかった?」
「それは……やっぱり初めは気が進まなかったけど、今は……」
「今は?」
本条さんはクスクスと笑う。
「ひ・み・つ」
ずきゅん――とハートを撃たれた。
「ちょ、ちょっと照れないでよ――。私まで恥ずかしくなっちゃうじゃない――」
本条さんは紅くなった顔を見せまいと手で隠す。
僕はその仕草を見てリンゴのように照れた。
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