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「いや~お熱いねぇ」
冷やかす声が聞こえ、僕と本条さんはハッと振り向いた。
今時なアベック? が二階から下りてくる。
「よっ」
男は軽い挨拶をして近寄って来る。
「君、確か高校生探偵の横川孝志君だよね?」
「は……はい」
テレビに映ってからというもの、こういう馴々しい輩に声を掛けられるようになった。
いつもなら悪い気など決してしないが、今ばかりは邪魔だからサッサと行って欲しい気分だ。
「あはっ。やっぱり~」
女性の方が僕に顔を近付ける。
ブラウンに染まった流行の髪型に、露出度の高い服、石鹸の香り。
僕はドキドキした。
けど本条さんがいる前で他人にデレデレ出来ない――と理性をフルパワーで守る。
「な~んだ、けっこう可愛いじゃん。ねぇねぇ、その娘探偵くんの彼女?」
本条さんは思わず「え!?」と声をあげる。
どっちの意味なんだろう……少し気になった。
「違うの? じゃ、アタシ探偵くんの彼女に立候補しちゃおっかなぁー」
「えっ!?」「わ、わ、わ、私は、その、よ、よ、よ、よ」
「ウフフ、冗談よ。君も、早く告んないと彼女誰かに盗られるよ」
そう言ってアベック? はイチャイチャしながら食堂へと消えて行った。
……なんだか的を射られた気分だ。
本条さんはというと顔を紅くしてじっと下を見ている。
「――そ、そろそろ僕達も食堂へ行こっか」
本条さんはコクリと頷いた。
恥ずかしくなって僕達は少し距離を離して食堂へと向う。
――少し歩いているとアレを見つけた。
「……階段」
受付から少し行った場所――あの階段はまだあった。
警察が調べた後らしく、床と壁にはまだビニールが敷き詰められている。
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