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「じゃ、僕はハヤシライスにしようかな――本条さんは?」
「うん。私も同じので」
「そっか。――あっ、すみませーん」
カチューシャの女性がタイミングよくキッチンから出て来た。
「はい、お決まりですか?」
「ハヤシライスを二つ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
彼女がキッチンへ戻ろうとした時、僕はついでに聞いてみることにした。
「あ、あの。もしかして陽子さん――ですか?」
彼女はクスクスと笑う。
「はい。――あなたが横川くんね? 主人から聞いてるわ」
カチューシャの女性はやっぱり陽子さんだった。
頼りない亭主を持って可哀想ですね――と言いかけたが、やめた。
「ウフフ。主人ね、あなたを養子にしたい――なんて言ってるのよ」
「よ、養子!?」
「そうよ。おかしいでしょ? ――でも実際に会ってみると、養子に来てくれたら嬉しいかも」
陽子さんは太陽のような笑顔を見せた。
天使がこの世にいるなら、たぶん彼女が天使なんだろうと思えた。
「じゃ、ちょっと待っててね。すぐにお料理持って来るから」
陽子さんはキッチンへ戻って行った。
「――ああいう夫婦になりたいね」
僕は素直に頷いた。
温和な夫と優しい妻――きっと互いに助け合って暮らしているに違いない。
二人の幸せそうな顔を見れば、お金で買えない幸せを持ってるように見える。
ああいう夫婦になりたいね、か……え!?それって
「ご、ごめんなさい。そういう意味じゃないの、あのね、その……」
本条さんは顔を真っ赤にしながら、またメニューで顔を隠した。
可愛い過ぎるよ本条さん――僕もドキドキが止まらない。
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