終わらないトルコ戦

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西澤は初めてのワールドカップ出場が先発出場になった。確かにコンディションはずっと上がってきていたが、雨の中で1試合持つとは誰も思わない。 となると、そこでまず交代のカードが1枚必要になる。そう思うと、本当に西澤はあのコンディションで、よくやったと思う。 ただ、本当に西澤の技術力、持ち味を生かしたいのであれば、西澤に絡む選手がどうしても必要だった。彼は前を向いてスピードで自力で突破していくタイプの選手ではない。そうすると、やっぱりそこは森島とのセットでうまく使わないと。 後半、そのセットは実現するが、時間は10分もなかった。そのころには西澤も疲労困憊。これでは……。 柳沢が使えない状況で、ポストプレーを期待して西澤をどうしても使いたいのなら、最初から森島と西澤を先発させておけば良かったとも思う。西澤に疲れが見えたら鈴木を出す。後半、敵陣を切り裂く選手として三都主を左サイドの高い位置に置く。小野は稲本が退いた後のボランチに入る。いよいよとなったら中山を入れて最後の賭けに出る……。 トルシエはそれまで、選手をスタメングループとジョーカー的な仕事ができるグループとに分けて考えていた。 それがチュニジア戦まではうまく回転していた。それを、なぜ……。 三都主はどちらかというとジョーカー的なグループにいれていたはずなのに、なぜ先に切ってしまったのか。 なぜ、なぜ、なぜ。 よりによって、最後の試合が、こんな後悔ばかりが残る内容になってしまうとは。 コッリーナ主審の笛が鳴った。日本の戦いは終わった。 (引用 山本昌邦備忘録第9章328P、329P)
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