終わらないトルコ戦

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試合終了の笛ではなかった。 トルコのオフサイドであった。 素早く松田がボールをセットする。宮本が前線に上がる。中田浩二が前線に上がる。 今まではフラット3のディシプリンを守り、決して前線に飛び出るような攻撃参加をしなかった彼らがこの日一番のダッシュで前線へ上がっていく。 ベンチのスタッフが、選手が腕を左右に振り、上がれ上がれと叫んでいる。 小野が、明神が、戸田がゴール前に走る。 松田の正確なフィードがゴール前の混戦に送られる。ペナルティエリア外で鈴木が競ったボールがペナルティエリア内の無人のエリアを転がっていく。 それをトゥガイが大きくクリアする。本来ならこれでタイムアップの笛が鳴るところであるが、結末は違ったものになった。 最後のワンプレー、これで終わらせまいと体を投げ出して突っ込んでいった中田浩二の顔面にトゥガイのクリアが当たる。 ボールはそのままゆっくりとした放物線を描き、GKのリュストゥが傍観する中、ゴールに吸い込まれた。 雨の宮城は一瞬静まり返ったあと、爆発した。 恐らく日本中が同じ呼吸をしたに違いない。 中田浩二がその場に倒れ込む。腕を上下に動かして喜びを表現した。 普段は冷静な中田英寿が中田浩二に倒れ込む。そしてまた一人、また一人と中田浩二に飛び付く。 宮城が、日本が揺れている。 ガックリと肩を落とし、腰に手を当てるトルコ。 コッリーナ主審が長い笛を吹いた。タイムアップ。 試合は土壇場で延長戦に突入した。
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