終わらないトルコ戦

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ベンチに帰ってきた中田浩二は鼻血を出して笑いながら涙を流し叫んでいた。 もしあのゴールが入らずに試合が終わっていたら、ワールドカップのトーナメントで自分のパスミスからコーナーで失点し負けた事をこれからずっと引きずっていったであろう。私は中田浩二に「よくやった。でもまだ延長戦がある。しっかりマッサージをしてもらえ」と声をかけた。 普通の代表なら延長戦の経験が少ない。親善試合とリーグ戦で試合が消化されていく代表チームは延長戦を戦う経験というのは絶対的に不足しているはず。 しかし日本は違った。日本はアジアカップの中国戦や、シドニーでのアメリカとの戦いなどの貴重な経験もあるが、更にJリーグがある。Jリーグはリーグ戦にもかかわらず、90分間で決着が付かなかった場合はゴールデンゴール方式の延長戦を行なっている。 私は日本はトルコよりは有利だと思った。 控えの選手が水を渡し、マッサージを手伝い、試合に出ている選手に声を掛ける。 今大会でまだ出番がない川口や秋田などが大声を出して盛り上げる。 ラインコントロールのやり方と、ゴールデンゴール方式だという事を確認し、円陣を組む。 サポーターが円陣に合わせて叫んでいる。 「いいか、この試合に勝てば、今までのワールドカップの歴史の中で一番のゲームになるよ。ベストゲームだよ。絶対に勝とう。勝って静岡に帰ろう!」 トルシエの言葉をダバディが訳す。 キャプテン宮本の掛け声で円陣を解き、ピッチに向かう。 「ヒデ、大丈夫か」中田英寿に声をかけた。「うん、大丈夫」なんて素っ気なくしてる。本当に凄いなと思った。もう右足首は限界なはずだ。 サポーターの歌声が凄い。この後押しは大会を通じて本当に助けてもらった。 コッリーナ主審の笛がなる。
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