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「寂しい?」
「ん、少しね」
「僕がいても?」
「それは別よ。ヨシュアのいるポジションをレンや父さんたちが埋められないように、あの二人のポジションを誰かが埋めるなんてことは出来ないことなのよ」
「それは言えてるね」
ヨシュアの相づちを聞いてエステルは目を閉じた。
「なんだか数日しか経っていないのに酷く懐かしいな」
「え?」
「だって、旅の間はよくこうやって二人で話していたじゃない。でも、家に戻ったら父さんたちがいて二人きりになることもなかったし、こうやって二人でゆっくり話すこともあまりなかったなって」
「そうだね」
そう言って抱きしめてくるヨシュアの腕が心地よく、彼の心音が聞こえることに安心感を覚えたエステルは、自分が意識を手放すのに抵抗を感じることはなかったのだった。
「エステル?」
「・・・・・・」
凭(もた)れてくる重さが増したためヨシュアは腕の中の彼女を見つめて、そしてため息を吐いた。
「お約束をするのはやめてくれないかな」
切実な願いは、幸せな顔をして眠るエステルには聞こえることはなかったのだった。
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