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帰ってきたことにほっとしたのかどうかは謎なのだが珍しく体調を崩したエステルは、一週間ほど寝込んでいた。と言っても過保護と言ってもいいほど心配していたヨシュアとレンの手前、エステルは大人しくしていただけである。
だがそれも限界があった。普段から元気が取得の女の子である。エステルは完治し始めた病気にいつまでも縛り付けられるのを嫌いそろそろ外へ出ようとしていた。
しかしその頃になって魔獣の動きもある程度収まり、クルトたちが真面目にそして着実に実力を伸ばしたこともあって彼女の出番が無くなっていたのだった。
膨れるエステルをなだめながらも、ヨシュアは次の行動を考えていた。
ジッとしているのを嫌うエステルの考えを把握している彼である。当然考えないはずはなかった。しかしあまり無理をさせたくない手前、いい案はなかなか浮かばない。
父カシウスはあの日から未だ戻らず、そんな彼をいつものこととエステルたちは気にも留めていなかった。
そんな日常の昼下がり、それはレンによって届けられた。
「エステル。これ貰ったんだけどどうする?」
なんの変哲もない白い封筒をレンはエステルたちの前に差し出す。
「なにこれ?」
不思議に思いながらもレンから受け取ったエステルは、封を開き中を見た。
そこには一枚の手紙と三枚の飛行船のチケット。そして『エルモ温泉宿泊券』と書かれたチケットが入っていた。
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