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「どうしたの、これ?」
エステルは手紙を読まずにまずは持ってきた本人に問うた。
「じつわね、今日雑貨屋さんに用事があって行ってきたの。そうしたら店員さんに『いつもありがとう。今日はこれを引いてね』って言ってくじ引きの箱を示されたのよ。それで、レンは興味がなかったんだけど、とりあえず引いてみることにしたの」
決して自分はそんな子供っぽいことをしたいと思っていないと強調するようにして言葉を綴(つづ)るレンをエステルたちは微笑みながら見ていた。
「それで引いた一枚に『一等賞』って文字が書いてあったの」
「じゃあ、これはレンが当てたくじ引きの景品なの?」
「そうよ。店員さんが『すごいわね!』ってびっくりしていたわ」
本人は無意識なのだろうが、嬉しそうに報告するところが子供らしいということに気が付かないままレンはエステルに言う。
そんな妹分の頭を撫で、エステルは「すごい、すごい」と言って喜んだ。
同封されていた手紙を開く。
そこには『日頃の感謝と皆様の健康を願ってこのチケットを差し上げます』と書かれていた。
レンが当てたこの宿泊券をムダにする必要などこにもない。ということでエステルたちの次の目的地はこれで決まったのだった。
しかし次に問題が出たのはレンが『飛行船に乗れない』ということだったのだ。
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