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エステルが中に入るために扉を引いた。
カランっと涼しげにドアのベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
新しい受付の人なのだろう。短く刈り上げた頭に瞳が見えないほどに細められた目を持つ青年がエステルの目の前で声をかけてきた。
中に入ろうとしていたエステルは何とか一歩を出すのを踏みとどまった。そうしないと相手と接触しそうだった。
そう、本当にエステルの目の前に青年はいたのだった。
「えっと、新しい受付の人?」
扉から中に入らずにエステルは問う。
「はい。ロート・ビリックといいます。どうぞビリックと呼んでください。よろしくお願いします」
「う、うん。こちらこそヨロシク。あたしはエステルよ。エステル・ブライト」
深々と頭を下げてくるビリックにエステルはたじろぎながらも挨拶を返す。
「ああ、あなたがエステル・ブライトさんですか。あなたの噂はいろいろ聞いております。前任のキリカさんがとても誉めておりましたよ。若いのに一番頑張っているって」
「そ、そうなんですか」
愛想笑いを返しながらもどうしようとエステルは悩んでいた。
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