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「「グラッツ先輩!」」
エステルとヨシュアは振り返って相手を認め、思わず名前を呼んでいた。
そこにはくすんだ赤毛に同じ色の瞳を持つ青年グラッツがいた。
「なんだ。エステルとヨシュアか。いつこっちに戻ってきたんだ?」
二人を認めたグラッツも、気さくに二人に笑いかける。
「戻ってきたのは一月ほど前だったと思います。今までロレントにいたので」
「そうか。俺は最近このあたりを主に巡回していたからな」
「そうなんですか。ところで、どうしてここを片付けるのがくたびれるだけなんですか?」
相づちを打ちながらもエステルは疑問に思っていたことを率直に聞いていた。
それに苦い顔をしたグラッツはあごでギルドを指しながら、
「ここはな。つい最近、俺とアガットで片付けたところなんだ。その前もティータちゃんがたまに片付けの手伝いに来ていたのに、気が付けばこの有様。だからもう誰も片付けに来たりする物好きはいないってわけだ」
と言い切った。
その話が本当だと示すように、外で話す遊撃士たちを誰も疑問に思って足をとどめることはない。扉が開いていて中が見えているはずなのに誰も気にしていなかった。
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