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そしてその後に若葉が走り、最後に和香が流しをスタートさせると、多くの高校陸上部員が練習していた競技場内に一瞬の沈黙が訪れた。
県高校女子優勝の若葉。
そしてそれに匹敵するほどのスピードでトラックを駆け抜ける中学走り高跳びチャンプ。
極めつけは、高校女子優勝の若葉より1秒近くも早いタイムでバックストレートを駆け抜けることが出来る和香。
『今年の青葉……強い、よね』
彼女たちの走りを見た、他校の女子選手たちは口々にそう言った。
そして先に走り終えた井上は、そんな彼女たちの走りをゴール付近で眺めながら確信していた。
『今年の女子4継は、間違いなくうちの優勝だな……』
走り終えるや否や、若葉はそのまま井上の下へと駆け寄り手を取って言う。
「ねぇ井上君見た、2人の走り?4継にエントリーすら出来なかった私たち女子部が、一気に優勝候補よ!」
高校陸上というステージで汗を流す全ての選手において、個人種目での優勝はもちろんのこと、女子なら4継と呼ばれる4×100mリレー、そして男子はマイルと呼ばれる4×400mリレーでそれぞれの高校の名を背負って走り入賞するってことは、筆舌に尽くし難いものがあった。
若葉は涙目になりながら和香と美空に駆け寄り、黙ったまま何度も頷いた……。
そして規定の本数を走り終えた後、美空はひとりトラックからフィールドへと練習の場を移し、高跳び用のマットの前で再度ストレッチを開始した。
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