あいつとの出会い。

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一連の準備運動を終えた美空は、マットの前に一人立ちつくし想いを巡らせる。 そしてバーの位置を1m65cmにセットして、何度も何度もその高さを目で確認した。 丁度自分の目線の高さであるそのバーの横たわる位置は、彼女が8ヶ月前の全国大会の舞台で一度だけ飛び越えることが出来た高さだった。     「本当にもう一度この高さを跳べるのかなぁ……」     そうぶつぶつと言いながら、美空はその足で助走の歩幅を測る。 その後規定の場所数箇所にテーピングで目印をつけると、一度バーを外して何度も何度も助走の練習をした。   美空はまた貸切のフィールドのど真ん中で軽めのストレッチをすると、すくっと立ち上がって再びバーを掲げた。   そしてさっきマークしたテーピングの場所に立ち、もう一度視線をそのバーの高さに合わせる。     「もう一度これを跳ばなきゃ、高校に行ってまで陸上をやる意味なんてない!」     そう言って美空は軽やかな助走を一歩一歩踏みしめながら開始した。 タンタンタンと一定のリズムを刻むように、フィールドから伝わる感覚を噛み締め走り出す美空。
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