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「ちょっと美空、なにぼぉーとしてんの着いたよ?さ、降りよ」
姉妹は高校の入学式の前の短い春休みも練習に励むため、自宅のある海沿いの町から電車に乗って市内の陸上競技場まで毎日足を運んでいた。
「強化指定選手の立花和香と美空でーす」
競技場の窓口で和香が係りの人にそう告げると、受付の女性はにっこりと笑顔を見せて言った。
「はいはい、分かってますよ。今日も練習頑張ってね」
本来なら入場料金を払わなければ入れない競技場も、彼女たちは県の強化選手となっていたため顔パスで中に入ることが出来た。
2人は早速更衣室に向かい、お揃いの赤いジャージに着替えてウォーミングアップを始めた。
全面ポリウレタンの張られた全天候型のタータントラックを2人並んでゆっくりと走り始めると、似てない双子には否が応でも視線が集まった。
身長153cmの和香、そして173cmの美空。
その身長差20cmの双子は、そろって全国優勝したという実績を抜きにしても人々の注目を浴びるに十分だった。
母に似て誰にでも愛されるような笑顔が可愛い和香と、父に似て壮麗で優美な雰囲気が漂う美空の2人は、美人姉妹としても周囲の感興を引き付けた。
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