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井上と名乗る男の言葉を聞いた美空は、慌ててその場に立ち上がる。
うまく状況を理解できていないような様子の和香の肩を、美空はぽんぽんと叩いて同じように立ち上がるように促す。
あっ、と、事情を飲み込んだ和香が井上の差し出した手を掴み握手に応じた。
「こ、こちらこそよろしくお願いします。うわー、派手というか変わった色のジャージですねー」
井上は、あははと声を出して笑うと、今度は美空にも握手を求める。
「きみが美空ちゃんだね?うちのジャージはバッタみたいな色だって言われてんだよね。でも女子の跳躍選手ってまだいないから、君が名実共に女の子では始めてのバッタだな」
美空はそう言って笑顔を見せる井上に、怪訝そうな表情を見せながらも差し出された彼の手を掴んで、よろしく……と呟いた。
身長が173cmある美空は、同年代の男子よりも背が高いことが殆どだったが、井上はそんな美空よりも大分高い位置から並んで立つ姉妹を見つめた。
そして爽やかな笑顔を見せながら、うんうんと何度も頷く井上の後ろから、彼と同じ色のジャージを身に纏った一人の女性が駆け寄ってくる。
「井上君、どうしたの?」
その声に振り返った井上は彼女が傍にやってくると、彼女のことを和香と美空に紹介した。
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