101人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言って2人は肩を並べゆっくりと走り出す。
和香と美空はまたストレッチの続きを始める。
「なんか、凄く優しそうな先輩だね」
和香がそう言うと、美空も笑顔で言った。
「そうだね。ちょっとだけ高校で陸上続けることに不安があったんだけど、なんか安心しちゃった」
そうしてそれぞれにアップを終わらせた4人は、トラックの第3コーナー付近に集まって流しのダッシュを始める。
まず青葉学園の男子部長である井上が走り始めると、その力強く、そして風を切るようなダイナミックなフォームで駆け抜ける姿に、競技場内にいた他校の陸上部員たちは注目した。
井上は昨年の400m走の県大会第3位の実力で、1位2位だった当事の3年生がいなくなった今年は、優勝候補の筆頭に揚げられていたのだ。
だがその後に続いて美空が走り始めると、今度はその視線が美空の方に集中した。
「は、早ーい!」
昨年の県高校女子100m優勝者である若葉が、思わず声を上げた。
流しと言えどもその長身を躍動させ、結んだ長い髪を揺らしながら綺麗なフォームで走る美空の姿は、実際のタイム以上に見る者に加速度を感じさせた。
しかもその走りは、全国中学女子100m優勝者であり姉妹でもある和香の影に隠れてはいたものの、美空の100mのタイムは全国大会出場のために超えなければならない標準を軽く超えるほどだったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!