~引き継ぎ、夜任務1.5:月灰岩国

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  この前報告に行った時渡されたのを思い出してワンブラックカードを取り出す……やっぱ書いてねぇ。 「……どういう事だ?」 「医療費はかかるものだろう?2人なら尚更だ」 ――ちょっと待て? 医療費?2人? 「体調が優れないなら早く言え。鉄砲玉の5班がいないのは困る」 「……ちょー待て、ツッコむ所が多過ぎて何から言えばいいのか分かんなくなってきたぞ、オイ……」 「お前に突っ込まれるなら溺死を選ぶな」 「溺死は遺体は無惨だわ死ぬ時ァ苦しいわで最悪な死に方――ってまた下ネタか!好きだなお前も!」 「"も"、か……」 「俺は健康的な一般男子だからな――ってエロキャラ定着させようとすんな、アホ上司」 そう返した一拍後――フッと人を小馬鹿にした笑いを浮かべる。 ……ったく、この天邪鬼め。 「知ってたんだな」 「この敷地内で私が知らない事があるとでも?」 「……失礼しました、アドラー様」 俺らパトロール班の総括、最高権力者。 愛理・S・アドラー、御歳13歳。 それが今、俺の目の前で大量の書類と向き合っている人物だ。 かなり若いが、凄まじく頭の回転が速い切れ者。縁者のコネもなくこの地位まで上り詰めたスーパーウーマン。 いや、ガールか? その頭脳は諜報部にこそ活かせる気がするんだが……何だかな。 まぁパトロール班には頭脳派が少ないから班長の身としては助かる。 「私が過労死する前に体調を万全にしてくれ」 「あんたが過労死?仕事が趣味なボスに言われても危機感薄いな」 「次はナイフを投げるか?」 「失礼しました」 ナイフが来る前にと丁寧に頭を下げ、部屋を後にする。 自室に向かいながらワンブラックカードをしまい込み、呟く。 「さて、お許しも出たし……荷造りしねーとな」  
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