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『着いたよ。』
あっちゃんの声ではっと我にかえった。
私早くだいきとあみの誤解とかなきゃ。
何してるんだ?
早くしなきゃ。
またパニック状態に陥った私は、急いで車から出ようとした。
ドアに手をかけた瞬間
『待てよ。』
あっちゃんに腕をつかまれ抱き寄せられる。
『何?離してよ。私まだやらなきゃいけないことがあるの。』
するとあっちゃんは泣きそうな顔になりながら
『あっちゃんを見捨てないで。』
と言うのだった。
前だったら同情していたかもしれない。
かもしれないじゃなくて、きっとしていたに違いない。
『大丈夫だよ。』
って抱きしめていたに違いない。
でも、この時の私は何も感じなかった。
『やめてよ。』
と冷たく言い放った。
まるで別人のように・・・
ほんとはあっちゃんだけが悪いんじゃないって分かっていた。
優柔不断だった自分もいけないって分かっていた。
だからこそ、誰かにあたりちらしたくてたまらなかったんだ。
自分の無能さを誰かのせいにして逃げたかったんだ。
私はあっちゃんの方を振り向くこともなく、車を後にした。
もうあっちゃんのことなんてどうでもいい。
だいき・・・
あみ・・・
お願い信じて。
神にもすがる思いだった。
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