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それでも、私は最後まで何も言えなかった。
ただ弱虫なだけじゃなく・・・
だいきの優しさが痛くて何も言えなかった。
もし、「おまえって最低だな。」くらい言われていたら何か言い訳のひとつやふたつ言えたかもしれない。
罵声をあびせられるより、許されることの方が辛いなんて思いもしなかった。
優しくされると、自分のしたことの罪深さをよりいしっそう感じるんだ。
それに
『最後くらい笑ってな。』
そう優しく言ってくれるだいき自身、辛いに決まっている。
泣きたいくらいの気持ちに決まっている。
それなのに一度も私を責めようとはしなかった。
そのことに気付いた瞬間、私は思ったんだ。
なんて自分のことばかりしか考えていなかったんだろう。
なんて愚かだったんだろう。
もうだいきを困らせる訳にはいかない・・・
私はぐっと涙をこらえた。
『だいき、ほんとごめんね。ほんとごめんね。』
ひくひくしながら謝る私。
『もうこんなこと絶対するなよ。』
真剣なだいきの声。
『うん。』
私はだいきに誓った。
人の心を殺すようなことはもうしないと心にきめて。
『じゃあな、美咲。
幸せになれよ。』
『うん。ありがとう。
ほんとごめんなさい。』
『じゃあな。』
これが私達の最後の会話だった。
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