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むかし、あなたはギター、あたしはベースを弾きましたね。 あたしは高校のころバイオリンを弾いていて、4弦になれているから6弦は多すぎてどうしていいかわからないし、弦のならびがバイオリンとベースは同じなことがあって、あたしはベースをひいきにしていました。 あたしは自慢の爪を切って。 あの時のあたしは、自分に誇れるものが友達とネイルと楽器しかなかったので、ネイルには絶大な自信がありました。 楽器のためなら切る。 と言い切り、あっさり切りましたね。 でもそのずっとあと、楽器も弾かなくなったあと、 あなたのためにも切れない。 と言いました。 あれは、ほんとうにごめんなさい。 もし、正当な理由があって、たとえばこどものためとか、そうでなければ切るつもりがなかったから。 でも、いま、あなたのためならあっさり切れます。 あたしは自信がなかった分小さいことにこだわって、あなたをきずつけてばかりいました。 あたしが自分のからだで唯一好きな、手。 あなたはこの世で誰より、あたしの手をあいしてくれました。 お前の色のセンスが大好きだ。 この手を握っただけで、俺はすぐ、お前だってわかるよ。 と、言ってくれましたね。 うれしかった。 もう、きっとそう言ってくれる人はいない自信があるの。 でも、あたしは、あなたがあいしてくれた手、ずっと大事にします。 あなたが大事にしてくれた手、だから。 あなたが大事にしてたものは、いまでもあたしに大事なのです。
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