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昔々
何十年か前のことだった
私は妻でも恋人でもない人物と人生の大半を過ごす事になったのだよ
彼らに出会ったのは梅雨の真っ最中
相変わらず空がねずみ色でしとしと雨が降りしきる6月のこと
私は今よりずっと若かったがいわゆるホームレスだった
いつも駅や公園でその日暮らしを送っていたのさ
その日は公園の遊具の中で雨を凌いでいた
近くの幼稚園は静かになった頃だから午後になったばかりの時間だ
降り頻る雨は地面に潤いを与えるが私は湿った土が苦手で仲間と別れ一人遊具の中で素足をさらしていた
「一緒に雨宿りをしても良いかな」
「……あぁ」
この辺では見ない顔
後ろに一回り小さな兄弟を連れた少年が愛想よく微笑んでいた
傘もささず半袖に短いズボン
愛想のいい少年の後ろにいたのはまだ小さな少年だった
その子を庇うように前に立つ少年は静かに笑っていたのだよ
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