58人が本棚に入れています
本棚に追加
/113ページ
辺り一面を舞う桜吹雪。
そんなな中に一組の男女が立っていた。
やる気の無さそうな顔をした男子が突然頭を下げると、正面にいたスタイルのいい女の子はバツの悪そうな表情を浮かべながら何かを呟く。
直後、ガックリと肩を落とす男子生徒。
新学期早々の4月7日。溝口高校2年2組所属の梨尾 修は、1年の時から好きだった想い人である大森 沙有里に対して失恋を喫したのであった。
決戦の地であった屋上を夕日が赤く染める。
その真ん中に、ポツンと体育座りしている男子生徒がいた。修である。
どうやら、振られてから夕日が沈む今までずっと屋上にいたらしい。
「おーい、修」
そんな時、彼の背後にある屋上入り口から声がした。
振り向いた先には、一人のイケメンが。
「なんだ、イケメンか…」
その顔を確認するや、修はトレードマークである『やる気ナシフェイス』にさらにやる気の無さをにじませ、顔を正面に戻す。
「おっ、振られちゃった感じ?」
「振られてなかったらいつまでもこんな所で落ち込んでねーよ…」
そんな事を言いながら近づくイケメンに対し、修は溜め息混じりにそう答えた。
イケメンの名は安藤 隼人。修とは1年の頃から親友であり、クラスで一番モテる男だ。
「まあ、そ~んなに落ち込むなって。全人類の半分は女なんだぜ?そのうち新たな出会いがあるって」
隣に座った隼人は慰めるように修の肩を叩く。
「お前みたいなイケメンは選り取り見取りだけどな、オレはそうはいかねーんだよ。このやる気のなさそうなツラのせいでな。それに女より男の方が若干多いし」
そうは言うものの、修も整った顔をしている。
ただし、標準装備であるやる気ナシフェイスのせいで『不真面目』やら『だめ人間』やらあらぬ評判を付けられたせいでモテないだけだ。
「だからオレは、大森を諦めねぇ!」
「おぉ~っ、一途じゃん」
それから二人は立ち上がり、屋上を後にして帰路についた。
「ただいま~…」
修は自宅に帰ってきた。学校から徒歩30分ほどの場所にある狭いアパートの一室が彼の住処である。
「ふう…」
彼は真っ暗な部屋の中で器用にスーパーのビニール袋をテーブルに置く。
最初のコメントを投稿しよう!