その1『いきなり撃沈!?』

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とりあえず修は遅刻の罰則である身分証剥奪の危機を逃れた。 あとは予鈴より先に教室へ入り、出席を取られるだけだ。 そんなわけで駆け足で階段を登り、教室を目指す修。 「なんとか間に合いそうだな…」 安堵の溜め息をつきながら廊下の角を曲がろうとした修だが、ここで彼に新たなる試練が降りかかった。 「きゃっ!」 「うおっ!?」 突然、角から小柄な女子生徒が飛び出してきて正面衝突してしまったのだ。 尻餅をついて倒れた二人。 「痛ぇ…」 修は尻の埃をはらいながら立ち上がる。 ふと見下ろすと、まだ尻餅をついたままの女子生徒がキッと彼を睨んでいた。 その女子生徒は小柄でかなり可愛く、睨まれているにも関わらず修は『可愛い…』などと思ってしまう。 だが次の瞬間、彼女の言葉が彼の淡い思いを分子クラスにまで打ち砕いた。 「痛っ!!なにすんのよグズ!運動オンチ!ゴミムシ!!」 大きな声でそう言い放った女子生徒。 「なん、だと…?」 「だから、ゴミムシって言ってんのよ!バカ!」 あまりの言われように修は唖然とするしかない。まさかのゴミムシ扱いである。 さらに事態は最悪な方向に発展した。 女子生徒は尻餅をついた姿勢のままだったのだ。つまり、パンツが見えてしまうのである。 「きゃっ!!」 それに気付いた女子生徒は顔を真っ赤にしながらスカートを足の間に挟み込んでパンツを隠す。 「あんた、見たでしょ…」 肩をわなわなと震わせながら声を絞り出す彼女。 「はぁ?」 「あたしのパンツ見たかって聞いてんのよ!」 「見てねえよ!」 彼の名誉のために言っておくが、決して修は彼女のパンツを見ていない。位置的にちょうど隠れていたのだ。 だが、人間とは理不尽なものである。彼女は聞く耳を持たなかった。 「死ね変態っ!!」 「ふがっ!!」 彼女が投げた鞄は修の頭にクリーンヒットし、彼の意識は遠退いていった。 人っ気のなくなった廊下に鳴り響くチャイム。 意識不明になっていた修だが、彼はその音で目を覚ました。 「はっ!!」 彼は勢い良く上体を起こし、頭をふって正気に戻ると左右を見回す。 「うおっ!?誰もいねぇ!!」 一抹の不安を感じた彼は学ランの内ポケットから携帯を取り出して時間を調べた。
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