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そう、彼女はその凶悪な性格と間奥という名前から一部生徒に『魔王』という不名誉なあだ名で呼ばれていたのである。
「誰が魔王ですって?」
「ひ、ひいっ!」
『魔王』呼ばわりした生徒を睨み一発で沈黙させた綾菜。さすが、魔王の名は伊達じゃない。
しかし、そんな圧倒的迫力を誇る彼女に果敢にも攻撃をかける男がいた。
「おい間奥!てめぇさっきから人のことゴミムシ呼ばわりしやがって!!ふざけんなチビ女!!」
そう、梨尾修その人である。
「なに?文句あんの?」
綾菜も彼へ視線を向ける。そして交わる視線。
あたかもお互いの目から電撃が放たれ、二人の真ん中で火花を散らしているかのようだ。
周りの生徒たちは皆黙り込んで二人の対決に注目している。
そんな睨み合いの中、綾菜が口を開いた。
「あんた、ゴミムシは嫌だけど変態はいいわけ?」
「はぁ?」
「だって変態は否定しなかったし。ってかあたしのパンツ見たし」
「いやいやいや!見てねーし!」
そんな感じで戦いは勢いを増す。
ってか、確かに修は変態を否定しなかった。
勝負は綾菜が優勢だ。
修も必死で睨み返すが、やる気のない顔で睨んでもあんまり怖くない。
「これは、魔王の勝ちだな…」
誰かがぼそりと呟く。そう、クラスの全員が綾菜の勝利を確信していたのだ。
と言うより、誰もはなから『やる気ナシ夫』に期待していない。
だが、戦いは意外な形で終わりを迎えた。
「いーかげんにしなさ~い!!!!」
新任教師、渾身の怒声である。
「「す、すいません」」
ハモって謝り、同時に席に付く二人。
「お前の負けだな、修」
「く、悔しい…。ぜってーリベンジしてやる」
隼人に負けを告げられた修は、綾菜へのリベンジを堅く心に誓ったのだった。
時は流れ、昼休み。
あれからすぐさま授業が始まり、それ以降は特にトラブルもなく昼飯タイムを迎えた。
そんな教室の一角で修と隼人は弁当をつついていた。
「なあ隼人…」
修が自作の弁当を食いながら口を開く。
「ん、なんかテンション低い顔してんなぁ。どした?」
常にやる気のない顔をしている修のテンションの低い顔を見分けられるとは、さすが親友である。
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