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冷たい風が,あたしの頬を撫でて消えた。 気がついたらすっかり乱れてしまっていた髪の毛に手ぐしを入れて整える。 海沿いのこだかい丘を吹く風は冷たく凶暴だ。しばらくぼうっとしていたあたしの手や足は冷えきっていたし,耳は風を受ける度に痛い位だ。けれどもどれだけ凍えても,ここを離れることができなかった。 風がびゅう,と音を立ててまたあたしの髪の毛をあおる。もう直す気力もなく,乱れていくままにまかせた。どうせ誰もいない。 あたしは,目を閉じた。
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