Soliloquy

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―― もしもの話だ。 そう、これはあくまでも仮定の話。 例えば、あるところに18歳という若さで母親になろうとしている少女がいたとする。 相手の少年もまだ18歳の高校生。 もちろんの事、子供や結婚などの責任を負うだけの甲斐性もなければ覚悟もない。 少年はいつの間にか少女のもとを去った。 少女は両親をはじめとする親族一同に子供を降ろすことを勧められたが毛頭そんな気などなかった。 周囲の大反対をよそに少女は一児の母となった。 しかしこの出来事は厳格な考えを持つ少女の両親の大きな怒りを買うこととなる。 ――少女は家にいられなくなった。つまり勘当されたのだ。 まだ首も座ってないような乳飲み子を抱え少女は家を飛び出した。 それから少女は死に物狂いで育児と仕事をしていくことになるわけだが。 まるでチープなドラマの中の話だ。まあそれもいい、時間はまだあるんだから。 家を飛び出し、5年の歳月が過ぎようとしていたある時、少女……いや、母親は死んだ。 極度の過労から仕事場で倒れた母親はそのままコロッと逝ったらしい。 言っておくが、俺はその母親への同情話をしたいわけじゃない。問題なのはその残された一人息子の事だ。その息子を仮に少年Sと置くとしよう。 こんな言い方をするとまるで何かの事件を起こした少年のように聞こえるが、少年Sは今の所なにも事件など起こしていないから安心して欲しい。 ……っと、少し話がずれた。
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